第五話
『少しだけ形に』
無限書庫の司書長室でキャロが特訓をしている。
今日も今までと同じように、キャロが防御魔法の訓練をしていた。
「あのさ、フリードも訓練させてみる?」
けれども特訓の最中、ユーノが言ったのは意外な言葉だった。
「フリードも訓練ってどういうことですか?」
意味がよく分からないので、ユーノに尋ねるキャロ。
「いや、キャロが特訓してる時にいつもフリードは暇そうにしてるからね。それならフリードも一緒に訓練をしてみないかな、と思ったんだ」
「え? でも……」
フリードには竜魂召喚がある。
訓練する必要はどこにもない気がキャロにはした。
「竜魂召喚は確かにフリードを強くさせるよ。でもね、その状態の時でも攻撃が通用しない場合があるかもしれない。だからね、無限書庫を少し探してみたら竜が自身で技を……今のフリードだと『ブラストフレア』を強化させる方法があったんだ。まあ、すごく単純な方法だけどね。フリードにやる気があるならどうかな?」
人間の言葉をある程度理解できるフリードにユーノが聞いてみた。
するとフリードもやる気があるようで、
「クキュウ!」
了承、という意味合いで一つ鳴いた。
「やることは簡単。まず最初にブラストフレアを待機状態にする。あとは炎を小さく凝縮させるだけだよ」
「……それだけでいいんですか?」
「うん、そうだよ」
ユーノがあっさりと頷く。
確かに本当に驚くほど簡単だ。
「今の攻撃だったら簡単にはじく敵が出てくるかもしれない。なら、相手の防御を打ち抜く一番簡単な方法はどうすることだと思う?」
「攻撃の威力を強くすればいいんですよね」
「それが正解。だったら、どうやって威力を強くする?」
「どうやって?」
キャロは首をかしげる。
「そうだよ。キャロやエリオ君、それにデータで見たけどナカジマさん、だったかな。君達は魔力をより多く込めることでスピードや威力、君に関しては補助を増強させてるよね」
「はい」
キャロが頷く。
「けれどフリードの場合は、圧縮の類に分類される」
「圧縮……?」
「つまりフリードの攻撃の場合、炎の大きさの問題もあるけど、それ以上に密度の問題なんだよ。どんなに大きくても、密度が全然なければ攻撃としては役に立たない。けれど小さくても密度がすごければ、攻撃として十分に成り立つ」
単純なことだね、とユーノは付け加える。
「だからフリードがやることは、まず凝縮させること。それが出来るようになったら、一回り大きくした炎をまた凝縮させる。それの繰り返しだよ。ちなみにブラストレイの場合は、収束し終わった後、同じように圧縮させればいい」
単純だけど、終わりのない作業。
「今のところ、君達の相手のメインは機械。小さくても風穴が開けば、それだけで動きは停止するからね」
そしてAMFを持っているからこそ、フリードの攻撃は貴重だ。
「これで大体分かったかな?」
「はい!」
「それじゃあ、フリードは僕が作る結界の中で訓練。キャロはいつも通り防御魔法の訓練だね」
◇ ◇
いつも通り修練を始めて20分。
まだ2秒を切ることは出来ないが、それでもキャロのラウンドシールドは、ちゃんと細部に渡るまで構成が出来るようになってきた。
「……よし。それじゃあ、次のステップにいこうか」
ユーノはキャロのシールドの出来を見て、次の段階に行くことを宣言した。
「本当ですか!?」
「もちろんだよ。まあ、これからやっていくことは二つあるんだけど、一つはそこまで変わらないんだ。シールドの構成を少しずつ複雑にして、シールド強度を増していくこと。これは今やっていることのちょっとした変化系だね。そしてもう一つは、同時に魔法を作る訓練だよ」
今日からすることをしっかりと説明しておく。
訓練がどういう効果を生むかを言わなければ、ついていく人は不安になるから。
「けど、いいんですか? 私、まだ速くシールド展開出来ないです」
「それはデバイスを外しての状態だからね。デバイスを付ければ僕とそこまで大差ないと思うよ」
問題なし、といった感じでユーノが答える。
「だけど、もっと早く展開出来るにこしたことはないから、これからもデバイスなしでの特訓は継続してくけどね」
より早く展開できれば、生き残る確率はさらに高くなる。
「それじゃあ、今日の残りの時間は魔法の同時使用について頑張ろう」
「はい。頑張ります!」
初めてやることに、意気込むキャロ。
「って言ってもね、簡単なことなんだよ実際」
ユーノは笑いながら、右手と左手で同時にラウンドシールドを作る。
「意識して魔法を作るのは同じ。ただ、同時に意識できるかどうかだけだよ」
「同時?」
「片方だけに意識を集中させたら、もう片方が絶対におろそかになるからね。下手をしたら発動すらしてくれない。だから意識を両方に分散させる」
これは説明しても、体験しなければ分からないだろう。
「とりあえず、一回やってみれば分かるかな」
だからユーノはキャロを促した。
「最初に支援魔法。それを維持しつつ、ラウンドシールドを展開してみようか」
「はい」
キャロは頷くと、言われた通りにやってみる。
「最初に支援魔法」
一番簡易のモノを作る。
「それを維持しながら……シールドを展開……」
右手で維持しながら、左手で言われたとおりにシールドを展開する。
「……あれ? 出来ました」
あまりにもあっさりと両方を作れた。
「そうだね。じゃあ、バインド……いくよ」
ユーノがバインドをキャロのシールドに向ける。
そして接触。
シールドは……割れなかった。
が、右手で維持されていた魔法は消えてなくなっていた。
「あっ……消えちゃいました」
「消えちゃったね」
ユーノが当然のように言う。
「キャロはバインドを防御するとき、右手にあった魔法のこと意識したかな?」
「いえ、防ぐことだけを考えていたから」
「そう、そこだよ。戦闘時で一番ネックなところは。魔法っていうのはね、意識してないと消えちゃうんだ」
ピッ、と指を一本立てる。
「例えば防御魔法を展開しながらの支援魔法、または召喚魔法を使おうとしたらどうしても防御魔法に気を取られる。もちろんそれはしょうがないことだよ。自分の命に関わることだからね」
おろそかにするほうがおかしい。
「だからこそ防御魔法をしっかりと行えることが重要になるんだ。慢心せず、油断せず、過剰に期待しない、けれども必要以上に不安にならないような、堅固な防御魔法がね」
防御魔法と併用した場合だけどね、と付け加える。
「それにもう一つ言うとしたら、これはあくまで初歩の初歩」
「え?」
キャロが驚きの声を発する。
「同時に展開できる準備は出来たけど、同時に構成をしたわけじゃないってことだよ」
「……言われてみればそうです」
確かに、同時に魔法を構築したわけじゃない。
「今は僕の攻撃を防御魔法で防ぎながら、支援魔法もおろそかにしないで魔法を待機させておくこと。それが出来てから初めて、順々に2つの魔法構成を重ね合わせていく。そして最後には同時に構成を出来るようにしていこう」
丁寧に、そして分かりやすくキャロのすべきことをユーノは言う。
「何か質問はある?」
「全然ありません」
だからキャロに質問などあるはずがなかった。
「質問がないなら、どんどんやってみようか。こればっかりは慣れるしかないからね」
◇ ◇
「うん、ほとんど出来るようになってきた」
キャロはもともと、この類は得意なのだろう。1時間ほど訓練をすると防御しながらでも維持できるようになってきた。
「本当ですか?」
ユーノの言葉に、思わずキャロの顔が綻ぶ。
「でもね、安心したら駄目だ。僕の攻撃はなのはの攻撃と比べたらミジンコみたいなものだから。彼女の攻撃はきっと何十倍も大きいプレッシャーがある。その時、今のように冷静に防げるかどうかが重要だよ」
そんなキャロにユーノからちょっとした注意が飛ぶ。
「はい」
けれど、キャロにはそのような心配はいらないようだ。
「いい返事だね」
ユーノはキャロの返事に満足すると、右の手の平をキャロの頭に持っていって撫でる。
「あっ! えへへ」
撫でられて、嬉しそうに目を細めるキャロ。
最近、ユーノはキャロの頭を撫でることが多くなってきている。
理由は? と聞かれれば、答えは単純だろう。
そこら辺にいる大人と同じく、子供が頑張ったから頭を撫でたくなる。
ただそれだけだ。
なぜなら、キャロは今まで頭を撫でられたことなどほとんど無かったのだから。
部族を追われ管理局でも居場所を転々とし、そしてフェイトに救われた。
つまり彼女の人生の中で『頭を撫でる』という行為をしてくれる人は、フェイトしか存在しない。
それはそうだろう。『頭を撫でる』というのは一種の親愛表現であり、基本的にその光景が見受けられるのは家庭である。
家族のいないキャロがそのような行為を受けてきたはずがない。
そして今まで出会った人の中で唯一『親愛表現』をしてくれるフェイトだって、あまり会えていなかったのだから、キャロが頭を撫でられた回数など数えるくらいしかない。
だからこそ、ユーノが頭を撫でてくれる、ということがキャロには嬉しかった。
普通の人にはあまりに些細で、当たり前のことだとしても……。
キャロには特別な出来事に思えた。
◇ ◇
「さて、これで初歩の初歩は終了だね」
ユーノがキャロの頭から手をどける。
「時間は少しあるけど、今日は終わりにしよう。いつもと違うことをやったからね、疲労はあるだろうし」
「……はい」
頭から手の感触が無くなったことに一抹の寂しさを感じながらも、キャロは肯定の返事をした。
確かにいつも以上に疲れを感じているのは自分でも分かっていたから。
ユーノはフリードを呼んで「今日はおしまいだよ。よく頑張ったね」とねぎらう。
フリードも慣れない特訓をしたせいか、少々疲れていた様子であった。
「よし、今日は最後にお茶でも飲もうか?」
「え?」
フリードも呼んだことだし、もう帰るものだと思っていたキャロが驚きの声を発する。
「よく眠れるためのお茶があるんだ。だから今日はそれでも飲む?」
ユーノが笑顔でキャロに問いかける。
キャロは突然のことで驚いたが、途端に笑顔になって首肯を一つした。
「それならちょっと待っててね」
キャロの返事を見て、ユーノが隣の部屋へと行ってしまった。
◇ ◇
数分後、ユーノがカップを持ってやって来る。
「はい、どうぞ」
キャロの前にお茶を差し出す。
「えっと、これは?」
「ハーブティー。安眠や精神安定の効用があるお茶だよ」
質問をユーノがいつものように答えた。
キャロは回答を聞くと、初めて飲むものだからか恐る恐る口をつける。
「……おいしい」
キャロの言葉に、ユーノの顔が綻ぶ。
「そう言ってもらえると持ってきた甲斐があったよ」
淹れてよかった、と。
本当に思えた。
「最近、六課の訓練はどう?」
「少し大変ですけど大丈夫です。最近はフェイトさんも訓練に顔を出してくれますし」
フェイトもこの間言ったとおりに時間が取れてきたのか、よく訓練に顔を出すようになってきた。
「それに最近、よく話すようになりました。フェイトさんの昔の話とか聞いてると楽しいんです」
「昔の話?」
「なのはさんと出会った時の話や、学校に転入した時の話とか色々してもらいました。転入初日はクラスメイトがたくさん集まってきて大変だったって言ってました。それにユーノさんの話もしましたよ」
「僕について?」
ユーノが首を捻ると、キャロが笑いながら何を話してもらったのか教えてくれた。
「ユーノさんに用事があって無限書庫を尋ねたら、ユーノさんが死にそうな顔で出迎えてくれたから慌ててベッドに縛り付けたとか、また別の用事で無限書庫に行ったらユーノさんが空中に漂ってるから調べ物でもしてるのかな? って思ったら単に倒れていただけで、急いで病院に搬送してなのはさんと二人で説教した、というのは聞きました」
ユーノは今キャロが言ったことについて……驚きのあまり突っ伏した。
しかもキャロが唐突に話したことは全て真実だし、嘘偽りはない。
──っていうか、本当に僕のことも話してたんだ。
嬉しいけれど、内容が内容なだけに少し悲しい。
「司書さん達がいるのに、いつもフェイトさんがユーノさんの体調不良を見抜いてたって本当ですか?」
「本当だよ。執務官の試験の時は、彼女が無限書庫に来て勉強してたからね。それで会ってる時にいつもバレてた。執務官になった後も僕が自分で無理してるな、って思ってる時はいつも無限書庫に来てベッドに縛り付けに来たよ」
ユーノが昔を思い出すように言う。
「フェイトさんが執務官になった後はどうやってユーノさんが無理してるって分かったんですか?」
まるで不思議だと言わんばかりに、キャロが訊いてきた。
「多分だけど、僕が無理してる周期を把握してたんだろうね。だからピンポイントで無限書庫に来れたんだと思うよ。……どういう理論で把握したのかは分からないけど」
今でもユーノにはどうやってフェイトが把握していたのかよく分かっていない。
余程のことじゃないかぎり、なのはやはやてにだってバレたことはない。
唯一、例外がフェイトだ。
「まるで以心伝心みたいですね」
キャロが笑顔で少しずれた感想をユーノに漏らした。
「……まあ、なんとも微妙な以心伝心だけどね」
ユーノは苦笑すると、カップを持って立ち上がる。
「カップを片付けてくるね。ちょっと待ってて」
ユーノがカップを片付けに行くと、キャロはまた一人になる。
いつもならフリードとのんびり待っていることもできるが、今日はキャロもフリードも疲れていた。
無言でぽけっ、としていた。
「…………ん……」
そして一人になったことで眠気が襲ってくる。
多分……いや、絶対にあのお茶を飲んだからだろう。
心地よい眠気がキャロをせめぎ立てる。
──うぅ……。
耳にはカチャカチャとユーノがカップを洗っている音が聞こえる。
たぶん、もう少し時間が掛かるだろう。
──じゃあ、ちょっとくらい……。
目を瞑っていよう。
そしてユーノが戻ってきて最初に目に入ったのは、ぐっすりと眠っているキャロだった。
「……眠っちゃったか」
小声で、キャロを起こさないように呟く。
お茶がよく効いたのだろうかはわからないが、今日の特訓も多少関わっているのは確かなのだろう。
──起こしちゃかわいそうだね。
せっかく眠ったのだから起こしてしまってはかわいそうだろう。
だからユーノはキャロから距離をとって電話を掛け始める。
耳の中で数コール鳴ると、電話を掛けた主に繋がった。
『もしもし?』
「もしもし、今大丈夫?」
『今? 平気だけど、どうしたの?』
「ちょっと頼みたいことがあってさ。無限書庫まで来てくれないかな?」
◇ ◇
十数分後、ユーノが電話をした相手が無限書庫にやって来た。
「いらっしゃい、フェイト」
「ユーノ、一体どうし──」
『どうしたの?』という言葉は、ソファーで眠っているキャロの姿を見たことによって、止められた。
「キャロ、寝ちゃったんだ」
「うん。部屋まで送ろうと思ったんだけど、部屋の場所知らないし、起こすのもかわいそうだったから。フェイトだったらキャロの部屋のロックを開けられるだろうと思ってね」
言いながらユーノはキャロをおんぶをする。
フェイトは眠そうにしているフリードを抱き上げた。
「付き合わせてごめんね」
「気にしないで」
「ありがと。じゃあ、行こうか」
「うん」
ユーノとフェイト、そして眠ったキャロとフリードは無限書庫を出て行く。
「フェイト、最近キャロ達と色んなことを話すようになったみたいだね」
歩きながらユーノがフェイトに話しかける。
「うん。きっと、自分が考えてた以上にあの子達と話してると思う。ユーノに言われたから、余計に意識してるのもあるかもしれないね」
「そっか」
「それでね、話してて思ったけど些細なことでもたくさん話すのは大事なんだね。嬉しそうなキャロとエリオの顔見てたら……本当にそう思った」
感慨深くフェイトが言う。
「でも、僕の昔のことも話すことないんじゃないかな? あの時のは冗談じゃなかったの?」
さっきキャロから聞いた話を、苦笑しながらフェイトに話す。
「冗談じゃないよ。キャロだってユーノのそういう話、面白がって聞いてたよ。『あのユーノさんが無茶するんですね』とか言って」
フェイトがくすくす笑う。
「酷いなあ」
ユーノもフェイトにつられて笑い始める。
「そういえば、六課での訓練にも顔をよく出してるって聞いたよ。六課でのキャロの調子はどう?」
「良いと思うよ。エリオとのコンビも良くなってるし、防御魔法はユーノが教えてるから段々強固になってる。ただ、私が訓練するときは攻撃を避けることに重点を置いてるよ」
「それでいいよ。僕がやってるのは、あくまで避けきれなかった場合でいいと思うから」
かわせるなら、かわしたほうがいいに決まっている。
「どっちにしてもキャロが生き残る一番良い方法を、僕達は教えていかなきゃいけないからね」
「うん」
「でも、まあ──」
ユーノはキャロを背負い直すと、当然のように言った。
「フェイトがいるから、その点は安心かな」
◇ ◇
「ここがキャロの部屋だよ」
転移装置を使い、10分ほど歩くとキャロの部屋の前に着く。
フェイトがロックを開けると、ドアが自動的に開いた。
ユーノは部屋の中に入り、フリードを寝床へ置いたフェイトに手伝ってもらいながら、キャロをベッドに降ろして毛布を掛ける。
毛布を掛けた後は、キャロの机の上に書置きを残しておく。
「これでいいかな?」
何かやり残したことはないかをフェイトに確認をする。
「うん、大丈夫」
そしてフェイトも問題なしと判断したので、二人してキャロの部屋を出て行き、フェイトはドアをロックする。
「それじゃあ、今日はここでお別れだね」
「同じ建物だけど、送って行かなくて大丈夫?」
「大丈夫。すぐ近くに部屋はあるから」
問題ないよ、とフェイトが付け加える。
「そっか。なら、今日はありがとう。おかげで助かったよ」
「こういうことならいつでも言ってくれていいよ」
こんなことは全然苦ではないのだから。
いつだって頼ってくれていい。
「ありがとう。じゃあ……おやすみ、フェイト」
「おやすみ、ユーノ」
お互い手を振りながら、フェイトは自宅へと向かっていく。
ユーノはフェイトの後姿を最後まで見届けた後、自分も自宅へと帰っていった。
◇ ◇
「…………ん……」
朝、目覚ましが鳴ってキャロは目を覚ました。
「……あれ?」
いつものように目が覚めたことに、少しだけ違和感を覚える。
──私、いつベッドで寝たんだっけ?
そういえば、無限書庫でお茶を飲んでからの記憶が……ない。
「あっ!! 私、寝ちゃったんだ!!」
昨日の記憶が蘇ってくる。
お茶を飲んだ後、眠くなったことを。
「どうしよう、ユーノさん怒ってないかな!?」
勝手に寝てしまったのだ。
もしかしたら怒っているかもしれない。
「とりあえず急いで、むげ…………あれ?」
慌てるキャロの目に入ったのは、机の上に置いてある一通の手紙。
『
キャロへ
眠ってしまったので、部屋まで連れてきました。
お茶がおいしかったからかな、ぐっすりと眠れていたみたいでよかったよ。
ちなみに部屋を開けてくれたのはフェイトだから、会った時にお礼を言っておいてね。
それじゃあ、訓練頑張って。
ユーノ・スクライアより
』
「よかった。ユーノさん、全然怒ってない」
安心した。
ユーノが怒ってないことに。
するとキャロの心の中は先ほどとは違って、驚くほど落ち着いたものとなった。
ほっ、としたキャロは思いっきり伸びをする。
「ん〜」
身体が軽い。
気分もいつもより良い気がする。
カーテンを開ければ、雲一つない空が眺められた。
なんだか、良いこと尽くめな朝だ。
「うん! 今日も頑張ろう!」
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