第十六話

『父娘』















始まりは少女の訪問。


そう……出会ったときは、優しい人だった。


初めて会った少女にも優しくしてくれる、優しい人。


けれど青年は……ただ、優しいだけじゃなかった。


だから少女の青年へのイメージは、何度も変わっていった。


時間を掛けながら、『優しい人』から『家族』へ。


『家族』から『父親のような人』へ。


『父親のような人』から…………『父親』へ。


それが少女の青年へのイメージの変化。


でもそれは……青年も同じ。


『可愛い女の子の弟子』から『家族』へ。


『家族』から『娘のような女の子』へ。


『娘のような女の子』から…………『娘』へ。






これが数ヶ月に渡って、青年と女の子が築いてきた絆。


ゆっくり……本当にゆっくりと時間を掛けて深まった絆。


家族を知らなかった女の子と、家族を知っているつもりでいた青年がお互いを想って生まれた絆。




それは、普通よりも遅かったかもしれない。


それは、普通よりもおかしいかもしれない。


でも、決して『違う』とは思えない。


違っているとは思わない。


違うなどと……思わせない。


だってそれが、二人にとっての…………大切な絆だから。




『父娘』




これがユーノとキャロが培ってきた、大事な絆の名前なのだから。

















『My family』 〜 Another title〜


      「My father 」




















いつか……言おうと思っていたことがある。

ずっとずっと……呼ぼうと思っていたことがある。



けれどいつも言おうと思うだけで、一度も言ったことはなかった。






言うことに恐怖があったから。

呼ぶことに恐怖があったから。






それに、




言えば何かが変わってしまうかもしれない。

呼べば何かが終わってしまうかもしれない。

そんなのは……嫌だった。






でも、それでも呼びたくて…………呼びたかった。






いつか……言おうと思っていたから。

ずっとずっと……言おうと思っていたから。






──だから今度こそは言おうって………………そう思ったんです。












































エリオとキャロが至極真面目な表情で向かい合っている。
いつもとは違う緊張する雰囲気の中、エリオはキャロから相談をされていた。

「……エリオ君はどう思う?」

相談を吐露したキャロは、心配そうにエリオに尋ねる。
けれど、全て訊き終えたエリオの反応は、

「そんな心配することないと思うよ」

キャロの表情とは裏腹に、あまりに軽い反応だった。

「そ、そうかな?」

エリオの返答を聞いても、キャロはまだ不安そうだ。

「うん。だってユーノさんだし」

エリオはキャロの不安を一蹴するように断定する。

「呼んであげたらすごく喜ぶよ」

あの優しい青年は、絶対に喜ぶであろう確信がエリオにはある。

「そ、そっか」

エリオの答えに、キャロの硬い表情が少し綻ぶ。

「じゃ、じゃあ……今日、呼んでみようかな」

エリオの言葉に少しだけ自信を持って、キャロは決意する。

今日、頑張ることを決意する。




──怖いけど……頑張って呼んでみよう。




一度も言ったことないけれど、一度も呼んだことないけれど、それでも……頑張ってみよう。

「頑張ってね」

エリオが笑顔で応援する。

「うん」

キャロがこくりと頷く。

「……頑張る」


















      ◇      ◇


















そして午前中の訓練が終わって、お昼休みになった時だった。
機会は唐突に訪れた。

「あれ? あそこにいるのってユーノさんじゃない?」

エリオがある方向を指差す。

「……あ!」

キャロも指の先を辿ると、ユーノを見つけた。
そして少しばかり遠くにいたユーノもキャロの声で、

「ああ、キャロとエリオ君か」

二人に気付いたようだ。
少し早歩きでキャロ達の所に駆け寄ってくる。

「やあ、二人とも」

「お久しぶりです」

ユーノの挨拶にまずはエリオが応えた。
けれどキャロはすぐに返事をしたりしなかった。
だが“すぐに”というだけなので、少し間を空けただけで、

「………………あの……」

ちゃんとキャロは小さな声で反応をした。

「あ、あの…………お………………お…………」

そして何度も同じ一文字を繰り返す。

「どうしたの?」

詰まるキャロにユーノが問う。
が、それが切っ掛けになってしまったのだろう。

「お、お久しぶりです」

言いたい言葉とは全然違う言葉がキャロの口から出てきた。
ユーノの頭にハテナマークが灯る。

「昨日も会ったよ?」

昨日も特訓で会っていたのだから、お久しぶり、というのはおかしい。

「そ、そうですよね」

間違えました、と付け加えるキャロに、ユーノは軽く笑った。

「二人はこれから訓練?」

「いえ、お昼ご飯を食べるところです」

「なら、僕も一緒に食べてもいいかな?」

ユーノもはやてへ資料を届ける仕事が終わって、ちょうど昼食を取ろうとしていたときだったので、二人に昼食の同行をしていいか尋ねる。

「もちろんです」

「もちろんですよ」

そして二人から返ってきたのは、当然の如く了承だった。
























三人がそれぞれ食事を持ち、席に着いて食べ始めた。
ここでキャロのチャレンジがもう一度始まる。

「あの、ユーノさん!」

「何?」

「えっと……………………」

「どうしたの?」

「あの…………お…………お………………」

「お?」

ユーノがキャロの発言を鸚鵡返しする。

「お…………オムライスっておいしいですよね」

「そうだね」

またしても言いたいこととは別のことを言ってしまうキャロ。
どうしても唇が震えて、先が続けられない。

「…………うぅ……」

そのことに自分で少々落ち込む。
理由は分かっていても……落ち込む。


どうして言えないのか。
どうして呼べないのかは……キャロ自身が一番分かってる。
誰よりも……自分自身が。
だからこそさらにショックが大きい。


──呼びたいのに……。


すごい呼びたいって思ってるのに、呼べない自分に衝撃を受ける。

──頑張らないと。

もう、心の中だけじゃなくて、想っているだけじゃなくて…………口に出して言うために。


























けれど、時間は簡単に過ぎ去る。

「それじゃ、キャロはまた後でね」

食事を終えると、ユーノは無限書庫に戻るために二人と別れる。
結局、一度もキャロは『呼べない』ままユーノは帰っていく。

「バイバイ」

ユーノは二人に手を振りながら、無限書庫へと帰っていく。
そしてユーノの姿が二人の前から完全に消えると、心配そうにエリオが訊いた。

「どうしたの?」

「ユ、ユーノさんに言おうと思うと緊張して……」

うまく口が動かなかった。

「……それに、やっぱりちょっと怖いかな」

いざ言おうとすると体全身が竦む。
一瞬だけ金縛りにあったように止まってしまう。

「大丈夫?」

「……大丈夫。今日もユーノさんのところに行くから、その時にちゃんと言うよ」


















      ◇      ◇


















しかし、キャロの幸先は悪かった。

「うーん……今日はあんまり調子が良くないね」

いつものようにユーノに師事を受けるキャロ。
毎日、似たような反復練習をしているのにも関わらず……今日は上手くいっていない。

「今日はもうやめよう」

「で、でも……」

「僕の訓練の方針は知ってるよね」

ユーノの真剣みを帯びた言葉にキャロはこくり、と頷く。

「色々と注意が散漫してるみたいだし、そのせいで怪我をしたりしたら僕は嫌なんだよ」

ユーノにとって、それが訓練中で一番忌避すべきことだ。

「もしかして疲れてる?」

「そ、そんなことはないんですけど……」

ただユーノに言いたいことがあるだけだから、疲れているということはない。

「でも、ちょっと集中しきれてないのも確かだよね」

「…………はい」

ユーノの言うことに間違っているところはないので、キャロも肯定するしかない。

「だから今日はもうお終い」

「……………………はい」

ポンポンと頭を叩いて、訓練終了を告げるユーノ。
キャロは言われたことに落ち込みながら……帰るために踵を返す。
そして歩く最中に……思う。

──結局……言えないのかな。

チャンスは何度もあった。
お昼の時もあったし、今の訓練中でもそうだ。

何度か呼んでしまおうと思っていたのに……いざ本人を目の前にすると萎縮する。
今まで“誰にも”言ったことのない呼び方だったから、怖い。
だから先延ばしにした。

それが呼べるチャンスを……刻一刻と減らしているとしても。

キャロはそのままドアまで歩いていく。
つまりキャロがユーノに言うことが出来るチャンスは見送ってくれるとき…………………………と、その時キャロはユーノに呼び止められた。

「あ、キャロ! ちょっと待って」

ユーノの呼び声に、キャロが足を止める。
キャロが呼び止めたユーノを見れば、彼は帰る準備をしていた。

「今日は僕も一緒に帰るから」



























司書長室の戸締りをしたユーノとキャロは、途中にある分かれ道まで一緒に歩き出す。
たわいもない話をしたりして、二人並んで歩いていく。
すると、だ。
分かれ道にあとちょっと、という所で心配そうにユーノがキャロに訊いてきた。

「今日はどうしたの?」

おそらく、何か訓練の最中であろうとも気になることがあったんだろうとユーノは推測していた。
でなければ生真面目なキャロが集中力を欠くことなどしないから。

「……………………今日は…………」

「今日は?」

「あの………………その………………」

言おうかどうか迷う。
言ってしまおうかどうか迷う。
けれどキャロが出した結論は…………先ほどと同じ。

「………………いえ、何でもないです」

「……そっか」

何かがあるのは目に見えて分かったが、それでもユーノは何も言わない。
無理に聞き出そうとはユーノも思わないからだ。

──ただ……。

思わないけれど、それでも願うことはある。

「けどね……何か言いたくなったら、いつでも言ってね」

──それは何でもいいから。

何だっていい。
愚痴でも、自慢でも、何でもいい。

「僕はいつでも待ってるからさ」

微笑みながら、ユーノは言い切る。

「それじゃ、また明日」

ユーノがちょうど分かれ道に差し掛かったところで、キャロとは別方向に歩き出す。
一歩ずつ……ユーノがキャロから遠のいていく。

どんどん二人の距離が離れていく。

キャロの声が届かない場所に歩いていく。


「………………あ…………」


キャロの瞳には離れていくユーノの姿。

──帰っちゃう。

キャロは心の中で呟いた。




──たった一回も呼べないままユーノさんが帰っちゃう。




呼びたいのに……今日は絶対に言おうと思ってたのに。

なのに一度も呼べないまま……否、一度も“呼ばない”ままユーノが帰ってしまう。




「……………………………ぁ………………」




不意に……キャロの瞳から涙が溢れてきた。

今までずっと機会を伺ってた。

いつになったら呼んでいいのかって考えてた。











目の前の人のことを『お父さん』って。











それをずっと考えてて、今だったら呼べるんじゃないかって思ったけれど、確証は無かった。
だからエリオに相談して、大丈夫だよって言ってもらえたから呼んでみようって思った。

──そう……思ったのに……。

でも、それでも目の前にするとやっぱり怖かった。

『お父さん』って言ったら、否定されるんじゃないかって。

『お父さん』って呼んだら、嫌がられるんじゃないかって。




だから『お父さん』って呼ぶのがとても怖かった。




否定されたらきっと立ち直れないと思ったから。

もう『お父さん』と慕うことが出来ないと思ったから。




でも……




今、去っていくユーノの姿を見て違うって分かった。



『お父さん』と呼ばないほうがずっと怖い。

『お父さん』と言わないで黙って後ろ姿を見ているほうがずっと怖い。

『お父さん』と呼ばずに後悔するほうが…………ずっと怖い。




「…………………………ん…………」




キャロはポツリ、とある言葉を口にする。
けれどあまりにも声が小さすぎて届かない。


「────さ──」


もう一度、囀るように言う。

でも、まだ届かない。

まだ聞こえていない。

まだまだ、ユーノには伝わっていない。


「おと────さ──」


さっきより大きな声で呼ぶ。

でも、ダメだ。

もっと大きな声で。

もっとはっきりと。

もっとユーノに届くように言わないと。

でないと、伝わらない。


「──と────さん──」


キャロはさらに声を振り絞る。

怖いのに……不安なのにも関わらず、さらに声を大きくする。




…………当然だった。




不安でも怖くても、それでも呼びたいのだから。









偽りのない『娘』になるために。


本当の『親子』になるために。









だから






だからこそ













押し迫る恐怖を押し殺してキャロは……叫んだ!











「おとーさん!!」













否定されるのが怖くても、嫌悪されるのが怖くても、それでも叫んだ。

初めて『おとーさん』と。

「キャロ?」

唐突に聞こえた声に振り返るユーノ。

キャロは、足を止めて振り替えったユーノに、すぐに駆け寄って抱きついた。
不意に訪れた衝撃にユーノは少しばかりよろめいたが、しっかりとキャロを抱きとめた。
そして、

「どうしたの? 突然『お父さん』だなんて」

初めて呼ばれた名称に、少しばかり疑問を持つ。
ただ、嫌なわけではなく、純粋に名称が変わったから発した問い。

「…………呼びたかったんです」

「呼びたかった?」

ユーノに抱きつきながら、キャロは頭をこくりと縦に振る。

「ずっと…………ずっと…………ユーノさんのこと『おとーさん』って呼びたかったんです……」

ユーノにちゃんと伝わるようにと、キャロは説明しようとする。
けど涙が込み上げ、声はしゃくり上げ、言葉が途切れ途切れでうまく喋れない。
でもキャロは続けた。

「けど、言ったら嫌がるかも…………とか、怒るかも…………とか、考えて……」

不安に耐えるように、ユーノの服をさらに強く握りしめる。

「一度も……誰にも『おとーさん』って言ったことがなかったから…………怖くて……」

瞳から零れる涙が止まらなくても、それでも喋るのをやめない。

「…………でも…………呼びたくて……」

絶対に言葉を紡ぐのをやめたりはしない。




“訊かなければいけないことがあるから”




これからも呼んでいいのかを。

これからもそう思っていいのかを。

ずっとずっと……ずっと呼んでいたいから、だから訊く。






「『おとーさん』は…………嫌ですか?」






さらにぎゅっ、としがみつく。






「私は『おとーさん』って…………呼びたいです」




















キャロの恐る恐る放った問い。

ユーノはその問いに軽く微笑むと、

「全然嫌じゃないよ」

しがみつくキャロを軽く抱きしめ、しゃくりあげるキャロの背中を優しくさすりながらユーノは答えた。

「君はね……他の誰でもない“僕の娘”なんだ」

そう、何回もキャロ本人にユーノは言ってきた。
キャロは自分の娘、ということを。

──だから……嫌なわけがないんだよ。

「大事な大事な僕の子供なんだから、『お父さん』と呼ばれて嫌なわけない」

むしろ嬉しくて嬉しくて、頬が緩む。

「だからね、呼んでよ」

何度だって呼んでいい。

何度だって呼んでほしい。

「怖がる必要なんて一つも無いんだ」

キャロの不安はただの杞憂。
どうしようもないくらいに、どうでもいい恐怖。
だから無用な心配などしなくてもいい、とユーノは思う。

「でも……」

──でもね。

ユーノは右手をキャロの頭に乗せ、優しく撫でる。

「怖かったのに……よく頑張ったね」

抱きついている少女の体が、小刻みに震えている。
キャロが自分のことを『お父さん』と言うことが、どれほど怖かったのかユーノには分からない。

だけど震える体から、本当に怖かったんだ、ということは分かる。

「本当にキャロは頑張った」

ユーノはもう震えなくていいようにと、キャロの頭をゆっくりと……あやすように撫でる。

「一度も……誰にも言ったことがなかったんだから、すごい勇気が必要だったよね」

たった10歳の女の子が言うには、どれほど勇気が必要だったのか分からない。
きっと自分には計り知れないほどの勇気が必要だったのだろう。

「だから、これからはキャロが不安にならないように……勇気を出さなくてもいいように、何度でも言ってあげる」

もう、無用な心配をしなくていいように、何度でも何回でもこの子に言ってあげよう。




「キャロは僕にとって本当に自慢の……本当に大切な最愛の娘だよ」




──キャロは僕の……本当の娘なんだって。

それでキャロの不安が無くなるのなら……いつでも言ってあげよう。

そして何度でも応えてあげよう。






この小さな女の子が『おとーさん』と呼ぶたびに。






何度でも。


















      ◇      ◇


















「でも、プライベート以外は『お父さん』って言わないでね」

「──え!?」

やっとキャロも落ち着いて、二人でまったりとしていた時にあったユーノの唐突な提案に、キャロは少なからず衝撃を受けた。

「仕事中はもちろんのこと、特訓中に言うのもだよ」

「ど、どうしてですか!?」

やっと言えることが出来るというのに、どうしてそういうことを言うのだろう、という思いがキャロの中を一瞬にして駆け巡った。
ユーノもキャロがショックを受けてるのは分かっていたが、それでもこれは決めておかなければならないと思っていた。

「理由は三つあるんだ」

ユーノは人差し指をまず一本立てる。

「一つは無駄な詮索をされたくないから。まあ、詮索するなんて余程の物好きぐらいしかしないと思うけど、それでも変な奴がいろいろ詮索してきたら厄介だということ。これが一つ目」

次に指をもう一本、中指を立てる。

「二つ目は公私の区別をしっかりとすること。今から公私を区別することができないと、後々苦労することになるからね」

そして最後、薬指を立てる。

「それで三つ目。これが一番重要なんだけど……」

笑いながらも、少しばかり困ったような表情にユーノがなる。

「どうもキャロに『お父さん』って言われると、すごい嬉しくて頬が緩んじゃうんだよね。それに甘やかしたくなっちゃうから、僕にも戒めの意味を込めて、ね」

三つ目の理由を言うと、キャロの表情が一瞬にして明るくなった。

「最後の三つ目はすごい個人的な理由だけどね。最初の二つについては納得してくれた?」

「はい!」

「なら、よかったよ」

ユーノがほっ、とする。

「でも、ですね……」

ユーノのことをお父さんと呼べたことによって、キャロの中で願望が一つ芽生える。

「今日はおとーさんと一緒に寝たいです」

キャロの提案にふむ、とユーノは少し考える。

「明日の訓練は大丈夫?」

「大丈夫です」

キャロが言い切る。

「なら、全然いいよ。今日は僕の家に一緒に帰ろうか」

にっこりと笑って、ユーノとキャロは一緒に家路を目指す。


ユーノとしては偽りなき娘のお願いを叶えるために。


キャロにとっては愛すべき父親と一緒に過ごすために。


二人は一緒に帰っていった。































〜〜おまけ〜〜

寝るときの二人の会話。








布団に入ったとき、ふとユーノが思い出したようにキャロに尋ねた。

「もしかして、お昼に会った時からずっと言おうとしてた?」

そういえば、お昼から何かを言いたさそうにしていた節があった。

「そ、そうですよ」

「そう思うと、けっこう可笑しかったな」

『お』をずっと言い続けていたんだから。

「だ、だっておとーさんを『おとーさん』って呼ぶのに、すごい頑張ってたんですよ!」

少し興奮したようにキャロが話す。

「でも、今は頑張らないで大丈夫だよね」

キャロの頭を撫でながらユーノは言う。
するとほんの少しだけ興奮したキャロも、すぐに沈静する。
だが、ここでユーノは思い出したように、

「そういえばキャロってオムライス好きなの?」

キャロにあることを訊く。

「えと……はい、好きですよ」

少し不思議に思いながらも、キャロが肯定する。

──あれ? 言ったことあったかな?

あまり言った覚えがないことを訊かれて、少々不思議に思うキャロ。

「なら、次にご飯作るときはオムライス作ってあげるよ」

「本当ですか!?」

「もちろんだよ」

けれどそんな一瞬の疑問は「ユーノの作ったご飯が食べれる」といった事実によって、すぐに消えていった。






だが後日オムライスが出たとき、疑問を思いだしたキャロは、そこでことの真相を知ることとなる。




































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