おまけシリーズその9
正直、微妙といえば微妙なもの。
ちょっとした息抜きに読んでください。
メールの方のおまけに。
そして友人に請われ、書いた代物です。
しかもユーノとフェイトではありません。
そこをご了承してくださったかたのみ、どうぞです。
では、いきます。
リリカルなのはアナザーストーリー
── cross galaxy ──
『出会い方は、本当に普通の出会いだった』
司書長室のドアがノックされる。
「どうぞ」
いつものように招き入れる。
「失礼します」
ゆっくりとドアが開く。
瞬間、蒼紫の長い髪がユーノの目に映った。
「初めまして」
女性が挨拶と同時に、敬礼をする。
「ギンガ・ナカジマ捜査官です」
女性──ギンガは凛と態度を守ったまま、ユーノを見据える。
「無限書庫司書長、ユーノ・スクライアです」
ユーノがそう名乗ると、女性は少しだけ顔を綻ばせた。
「資料提供について、お願いに来ました」
『だから本当に……たわいもない出会いから始まった二人は、たわいもない会話をする』
「ナカジマさんは……」
「ギンガでいいですよ。私のほうが年下なんですから」
確かなのは達と同年代だったはずだから、自分は年下のはずだ。
「でしたよね、スクライア司書長?」
ギンガが問う。
もちろんその通りなのだが、年齢云々の前にユーノもギンガと同じことを思う。
「僕もユーノでいいですよ」
「え? でも……」
「歳の近い人からスクライアと呼ばれることに慣れてないんです」
自分の年齢の倍以上の先生方以外には、あまりスクライアで呼ばれたことはない。
ユーノは頼み込むようにお願いする。
「そこまで言ってくださるなら。それでは……え、えっと……」
ギンガは一度「コホン」と咳をすると、ユーノと向かい合った。
「ユ、ユ、ユユ……ユーノ…………さん」
何度もどもりながら、ユーノの名前を紡ぐ。
そんな彼女の様子が可笑しくて、ユーノは声をあげて笑った。
「あの、男の人を名前で呼んだことがないので、その……緊張して……」
ギンガの言い訳に、さらにユーノの笑みが深くなる。
「わ、笑わないでくださいよ!」
「ご、ごめんなさい。でも、ギンガさんがあまりにも可愛くて」
『これは、どこにでもありそうなやり取り』
「ユーノさんでしたら、こういうのがいいんじゃないですか?」
「ん〜、分からないですね。僕、こういう飾り物に興味ないですから」
「でも一つぐらいはいいですよね?」
覗き込むように下からユーノを見上げる。
「に、似合うものがあれば、ですけどね」
そんな彼女の姿に少しドギマギしながら、ユーノはアクセサリーを探す。
「大丈夫です。似合うものは絶対にありますよ」
けれどギンガはそんなユーノを尻目に、自信を持って宣言した。
「どうしてですか?」
ユーノが問う。
すると、ギンガは少しだけ胸を張って、
「だって、私が見つけますから」
輝かんばかりの笑顔を、ユーノに向けた。
『普通の出会い、普通の始まり、けれど普通ではない……彼女』
「それでも貴方は受け入れてくれますか?」
雨が降る最中、彼女は傘も差さずにたたずむ。
「人ではない私を、ユーノさんは本当に怖がらずに受け入れてくれますか?」
「……ギンガさん」
「私は……もし、貴方が受けいれてくれなかったら。…………そうなったと思うだけで怖いんです」
ギンガの感情に共感するかのごとく、風雨はさらに強くなる。
「……だから答えは聞きません。だって……怖いですから」
ギンガは立ち尽くすユーノに弱々しく微笑むと、踵を返して歩いていく。
けれども、
「……ユーノさん」
一度だけ……たった一度だけ振り返ると、雨ではない『何か』を頬に伝わらせながら、一言。
「さようなら」
『大事なこと、大事なもの、大事な答え。けれど……叶わない、届かない、伝わらない』
「ギンねえが……さらわれちゃった」
「…………え……?」
スバルが泣きながらユーノに伝える。
「ギンねえがさらわれちゃったんです!!」
『その事実に青年は……決意をする』
「ほら、ユーノ」
無限書庫を出て行こうとするユーノに、アルフが『 』を投げる。
「眠りのお姫様を助けるんだろ? 一応、持っていきな」
彼の手の内にあるのは、今まで必要としてなかったもの。
「アルフ……」
「初めて必要になるんじゃないかい?」
アルフに言われて、手の内にある『 』を見つめる。
「……そうかもね」
「だろ? あんた専用のじゃないけど、ないよりマシだよ」
「ん。ありがと、アルフ」
ユーノはそれを手に、彼女の下へと向かう。
『そして……邂逅』
「ユーにい」
吹き飛ばされたスバルを、優しく受け止める。
けれど視線は……一つの場所で固定されている。
「ねえ」
蒼紫の髪をたなびかせながらたたずむ女性に、ユーノは悲しげな笑顔を向ける。
「……普段の君なら、そんなことしないだろ」
絶対に妹に理由なき暴力を振るうことはしない。
「本当の君なら、彼女にこんなことしないじゃないか!」
いつもの彼女に戻って欲しい。
ただ、それだけを想う。
──目を……覚ましてよ。
まだ、君に答えを言ってないんだ。
「お願いだから……目を覚ましてくれよ!」
無表情のギンガに、ユーノは叫ぶ。
「ギンガ!!」
『けれど言葉は通じず、始まるは……彼女の一方的な攻撃』
「…………あ…………ぐっ……!」
首を片手で締め上げるようにつかみ、そのまま上へと持ち上げる。
「……ギン……ガ……」
苦しそうな声を出すユーノ。
「たの……む……から……」
意識を途切れさせないように、必死に言葉を紡ぐ。
と、その時──
「…………あっ……」
その彼の胸元から、アクセサリーが……零れ落ちた。
それは彼女が選んだ…………大切なネックレス。
「………………」
ギンガがそれを見た……瞬間だった。
「…………なんだ……」
ユーノから苦しそうな気配が消えた。
同時に、少し笑みが浮かぶ。
「……ちゃんと……覚えてるじゃないか」
よく見れば、持ち上げていても喉を締め付けてはいない。
「……洗脳されていても……君は忘れてないじゃないか」
だって、彼女の顔を見れば簡単に分かる。
彼女の無表情な顔から一つだけ、似つかわしくないものがある。
本当に洗脳されて忘れていたのなら、絶対にありえないものがある。
それは──
「だから泣いてくれてるんだろ、ギンガ?」
一筋の涙。
『故に、彼女の目を覚まさせるめに──』
眠り姫を起こす方法は、古来から一つしかない。
「これが僕の気持ちだよ」
倒れている彼女に、顔を近づける。
「……目を覚ましてよ、ギンガ」
ゆっくりと目を瞑る。
『眠り姫の目を覚まさせる方法』
そう、それは──
王子様のキス。
本当は「My family」が書き終えたら載せようと思ったのですが、思ったより時間が掛かりそうなので、皆様の息抜きとして書いたものを載せておきます。
では、結城でした。