見つけた私がビックリしました。
載せるつもり……だったのかも今は定かではありません。
オマケなので誤字脱字、テキトー具合。
全てを考慮したうえでお願いします。
では。
「バレンタインデー」
2月7日。
その日、フェイトとキャロはある行事について話していた。
「ばれんだいんでー?」
聞き慣れない言葉に、キャロが首を捻る。
「うん。日頃お世話になった人とか、好きな人とかにチョコレートを贈る日のことだよ。こっちじゃ違うことであるにはあるけど、なのは達と過ごした世界では2月14日がそうなんだよ」
「じゃあ、おかーさんも誰かに贈るんですか?」
「私はなのはとかヴァイスとか、六課でお世話になっている人達に贈ろうかなって思ってるんだ。それで、ユーノには本命チョコをプレゼントするよ」
そこでキャロが再び、首を捻る。
「本命チョコ……って何ですか?」
キャロの質問にフェイトは少しだけ悩む。
「ん、と……どう説明したらいいかな」
バレンタインデーに贈るチョコには色々と渡す相手がいる。
が、今回の場合で考えると……。
フェイトは頭の中で言葉を纏める。
「えっとね、お世話になった人に贈るのが一応は『義理チョコ』って呼ばれるものなの。それとは別にもう一つ『本命チョコ』っていうのがあってね、それは大好きな人に贈るチョコレートなんだよ」
「それなら私、おとーさんとおかーさんとエリオ君と六課の人達に贈りたいです」
キャロが指を折って好きな人たちの名前を挙げる。
と、フェイトが慌ててキャロの指折りを止めた。
「そ、そうじゃなくてね。本命チョコは誰か一人にあげるものなんだよ。基本的には恋愛感情で“大好きになった人”に贈るのが本命チョコって言われてるんだ。“本命”って言うぐらいだからね」
フェイトの説明に、キャロは難しい表情をする。
「えっと、じゃあ……」
むぅ〜、と悩んで数十秒。
傍から見ても必死に考え抜いたキャロが出した答えは、
「本命チョコ、エリオ君に……あげます」
やはり大好きの種類で、エリオはちょっとだけ違う。
「で、でも、おとーさんにもすっごく気持ちの込めたチョコをあげます!」
かといって、ユーノに渡すチョコに気持ちが込もってないと思われるのも嫌なのだろう。
キャロは一生懸命、弁解する。
フェイトは苦笑すると、
「うん、それでいいんじゃないかな」
一つ、頷いた。
◇ ◇
そしてバレンタインデー当日。
大量のチョコを持った紙袋を持ったフェイトとキャロが六課にいた。
そして最初に見つけたのは、
「あ、ヴァイスさん」
フェイトとキャロはヴァイスを見つけると、彼の元へと駆け寄る。
そしてまずはキャロが紙袋から一つチョコを取り出して、ヴァイスへと差し出した。
「ヴァイスさん、バレンタインデーです」
「……ばれん……たいんでー?」
知らない単語を耳にして、頭にハテナマークが灯るヴァイス。
が、何かを差し出しているということを、それをくれるということなのだろう。
ヴァイスはキャロが持っているものを手に取る。
渡されたものは、小さくて黒い塊だった。
「チョコ? なんでまた?」
「私がいた世界ではね、女の子がお世話になった人達にチョコを配る習慣があるんだよ。それで、今日がその日なんだ」
そう言って、フェイトもキャロとは違うチョコをヴァイスに渡す。
「はあ、そうなんすか」
ということは、二人は感謝の印としてチョコをくれたということか。
「そんじゃ、ありがたく受け取らせていただきますよ」
軽くチョコを掲げて感謝すると、キャロの表情が嬉しそうに緩んだ。
「キャロ、ありがとな」
「あ、ありがとうございます!」
チョコを渡したキャロが何故か感謝する。
ヴァイスとフェイトは顔を見合わせて笑う。
そしてヴァイスはひらひら、と手を振って食堂に向かっていった。
「次は前線の人達に配ろっか」
「はい」
「ヴァイス陸曹、それなんですか?」
昼食時、合席したティアナに疑問を呈された。
「これか? キャロとフェイトさんに貰ってな。なんかお世話になったお礼らしいぞ」
「チョコ……ですよね?」
「ああ、あとでお前にも私に行くんじゃねえか? さっきそんなこと言ってたし」
パスタを口に含みながら、ヴァイスが返答する。
「でも、どうして突然チョコなんか」
「今日はなのはさん達の世界でそういう日らしい」
「へぇ、そうなんですか」
隊長達の世界での行事なんだ、ということでティアナは納得する。
「まあ、チョコはおいしいですしね」
「……だからって、食いすぎて太るなよ」
ボソリとヴァイスが呟いた瞬間、ティアナのチョップが高速で彼の顔面を捉えた。
◇ ◇
エリオを見つけると、嬉し勇んでチョコを渡しに行こうとするキャロ。
フェイトはそんなキャロに「本命を渡すときはね、一人で渡しに行くのがいいんだよ」と言って、キャロだけに行かせてみた。
「あの、エリオ君」
「どうしたの、キャロ?」
「これね、バレンタインデーのチョコ」
赤い紙に黄色いリボンでラッピングされているハート型のものを唐突に差し出されて、少しだけ困惑するエリオ。
「えっと……くれるの?」
「うん。本命チョコなんだよ」
「本命?」
「大好きな人にあげるチョコのことを言うんだって」
瞬間、エリオの時が止まる。
「……え?」
思考が止まり、身体も硬直する。
数秒ほど固まったままだったが、突如、
「ふぁっ!?」
奇声を発して行動を再開させる。
「あ、え? キャロ、えっと!? な、なに? なんだ? どう、はえっ!?」
しどろもどろに困惑しているエリオ。
そして、二人の本当に可愛らしいやり取りを観察しているのが一人、壁に隠れながら見ていた。
「我が娘ながら、直球というかなんというか」
変化など微塵も見せない見事な剛速球を叩き込んでいった。
「エリオもさすがに驚くよね」
影で見守っていたフェイトだって驚いたのだ。
当人はさぞかしビックリしたことだろう。
フェイトは二人のやり取りを見続ける。
「あ、エリオがやっと落ち着いたみたい。それで……うん、ちゃんと受け取ったね」
顔を真っ赤にしながらもしっかりとチョコを受け取っていた。
「さて、と。もうちょっとタイミングを見計らったら、私も二人のところに行こうかな」
そしてエリオにチョコを渡してあげよう。
息子になってくれてありがとう、という感謝の気持ちを込めて。
◇ ◇
司書長室の前に立つと、やはり緊張したのかフェイトは深呼吸を三度、行った。
──緊張するな。
義理ではないチョコを贈るのは初めてだ。
いくら恋人だからといっても、緊張しないわけじゃない。
というよりも、とてつもなく心臓が高鳴っていることを考えると、自分でも困ったくらいに緊張しているのだろう。
でも、
「……よし」
フェイトは覚悟を決めると、ドアをノックする。
『どうぞ』
中からユーノの声が聞こえた。
「失礼します」
フェイトはドアを開けて、中に入る。
仕事をしていると思っていたが、ユーノはフェイトの予想に反して机の上には書類のようなものはなく、コンソール画面を開いている様子もなかった。
彼はフェイトの顔を見ると、みるみる破顔していった。
「珍しいね、君がこんな時間に来るなんて」
「あの、仕事のほうは……?」
「ん? ああ、今日は早く終わってね。あとはキャロを待つだけだよ」
「そうなんだ」
ユーノは席を立って、ソファーに移動する。
フェイトもソファーへと歩み、そして向かい合うように座った。
と、ここでフェイトの不自然さにユーノが気付いた。
「何してるの?」
そう言ってユーノはフェイトのお腹のあたりを指差す。
「何か隠してる?」
ユーノはお腹……正確にはフェイトが両手で背中に隠しているものを指差した。
指摘されると、フェイトは小声で「ばれちゃった」と呟いた。
ユーノとしては、分かりやすすぎるくらいの行動をしているのに彼女はバレないとでも思っていたのだろうかと少し気になった。
が、フェイトならバレないと思っていそうだな、とも心の中で思う。
「あ、あのね」
少し緊張した面持ちでフェイトは背中に隠していたものを前に差し出す。
「……これ、バレンタインデー」
薄緑の包み紙に黄色いリボンをつけたチョコをユーノに渡す。
大きさはユーノが手のひらを広げても届かないほどの大きさだ。
「バレンタインデーって……確かなのはの世界にあるイベントの一つだったよね」
数年前まではなのは達が渡してくれていたのをユーノは思い出す。
「僕にくれるの?」
ユーノが訊くと、フェイトは頷く。
「……だって恋人だから」
今までとは全然違う関係になったから。
「ユーノと恋人になれたから、今年は絶対に渡したかったの」
仕事の都合をどうにかつけて丸一日オフにしたのも、このためだ。
「ありがと」
ユーノは感謝すると、フェイトに「開けていい?」と尋ねる。
フェイトは自分がいる場でチョコを見られるのは恥ずかしい気もしたが、了承した。
ユーノが丁寧に包装紙を剥がす。
中から出てきたのは……
「もしかして手作り?」
一つ、フェイトが首肯する。
ユーノの表情が、より優しくなった。
「や、やっぱり変だったかな。形も歪だし──」
「そんなことないよ。すごく嬉しい」
フェイトが言うほど歪ではないハート型のチョコを取り出して、ユーノは端のほうを折る。
そして口に含んだ。
「…………」
心配そうにユーノを見るフェイト。
そんな彼女が少しだけおかしくて、ユーノは笑った。
「大丈夫。おいしいよ」
ユーノがそう言って、ようやく緊張がなくなるフェイト。
「これってさ、朝の勉強のときにくれてもよかったんじゃない?」
小さく折っては食べる、ということを繰り返しながらユーノはフェイトと談笑を始める。
「だって、それだと渡した気分にならなかったんだもん」
「気分?」
「うん。やっぱり自分から会いに行って、チョコを渡したかったんだ」
大好きな人に会いに行って、チョコを渡す。
今まで友達がやっているのは見てきたけれど、自分がやるのは初めてだった。
それがこんなにも嬉しくて、楽しくて、恥ずかしくて、緊張するものだとは知らなかった。
「あと、すごく……憧れてたしね。恋する女の子の一大イベントだから」
「そうなんだ」
ユーノは微笑んだのを見ると、フェイトはソファーから立ち上がる。
「キャロもユーノにチョコを渡すから、ちゃんと受け取ってね」
「分かったよ」
フェイトが立ち上がったのを見て、ユーノも立った。
「今日はもう帰るの?」
「うん。ユーノとキャロの特訓の邪魔したら悪いし、それに……」
フェイトはユーノが手に持っているチョコに視線を向ける。
「やっぱり、その……ちょっと恥ずかしい」
「そっか」
ユーノが軽く笑う。
そして二人してドアまで歩いていく。
「チョコレート、ありがとう。あと、わざわざ来てくれて嬉しかった」
「ううん。私が来たかったから全然かまわないよ」
互いに手を振る。
「また、明日ね」
「うん。また明日」
フェイトは踵を返すと、小走りで帰っていく。
そんな彼女の姿が視界から消えるまで、ユーノはしっかりと見届ける。
「……さて、と」
そしてフェイトの姿が見えなくなると、司書長室の中へと入る。
「キャロが来るまで、フェイトのチョコを堪能しようっと」
ユーノはニコニコしながら、テーブルの上にあるチョコを大事そうに手に取った。
終了