なんだろう、これ。
といった感じの作品です。
ちょっとネタ詰まりしたので、リフレッシュ作品。
作品としてはまったく別物ですが、簡易版「My family」みたいなものでしょうか。

一応、「もしユーノとキャロが保護されたすぐ後ぐらいに出会っていたら」というもの。

すこぶるテキトーなんでお気をつけて。
というか、マジには捉えないようお願いします。











では、


「My family〜 if 〜」

いきます。














「ユーノ、ごめんね。急に仕事が入っちゃったから」

「ううん。気にしないでいいよ。明後日までは学会も無限書庫での仕事もないからさ」

大丈夫だよ、とユーノはフェイトに伝える。

「それじゃ、キャロのこと……お願い」

フェイトの言葉にユーノは一つ、頷いた。

「キャロもユーノの言うこと、ちゃんと聞いてね?」

「……はい」

「そしたら、行ってくるね」

ドアから離れていき、そのままゆっくりと遠ざかっていく。

「頑張って」

ユーノが手をひらひらと振る。
フェイトはそれに一度応えてから、ユーノの視界から消えていった。

「さて、と」

ユーノは自分の隣に佇んでいる女の子と視線を合わせるために、しゃがみこんだ。

「こんにちは」

「……こんにちは」

抑揚のない返事がきた。

「フェイトから聞いてると思うけど……大丈夫?」

「……だいじょうぶです。なれてますから」

声の大きさも何も変化が無く、ただ単純に言葉を発している。

──まともな扱いをされてなかったっていうのは本当みたいだね。

こんな小さな子が、心を凍らせている。
感受性を少なくして、心に受けるダメージを少なくしている。
ユーノは少し悲しそうな表情を浮かべると、

「……いいかい、キャロちゃん」

キャロの頬を両手で挟み、真っ直ぐに視線を合わせた。

「駄目だよ。慣れてるなんて言ったら」

「…………えっ……?」

「今まではそうだったかもしれないけど、これからは違うんだ。だからそんな悲しいことは言わないで」

自分の親友がこの小さな子を保護したのだから、もう大丈夫。

「すぐに実感することは無理だと思うけど……ゆっくりでいい。ゆっくりゆっくり、今までとは違うことを知っていこうね?」

キャロの目を見て真摯に伝える。
その姿は、キャロにフェイトと始めて会った時のことを思い出させた。

「…………はい」

「ん、いい子だね」

ユーノはキャロの頭を撫でる。
と、ここでユーノは何かを思いついたのか、

「そうだ」

両手をポン、と叩いた。

「キャロちゃん、外に出かけようか」
















      ◇      ◇
















ユーノはキャロと手を繋いでショッピングモールを歩く。

「キャロちゃん、何か興味があるところがあったら言ってね」

「……はい」

「………………」

ユーノは空いた右手で頬を掻く。

──何か反応があると思ったんだけどな。

外に連れ出してみれば、何かしらに反応するとユーノは踏んだのだが、キャロはただぼんやりと前を見るだけだ。
ユーノは何かないかと思い、周囲を見回す。

「……ん? あれ、何だろう?」

ふと視界に、人がたくさん集まっている場所が映った。

「行ってみようか」

「……はい」

ユーノはキャロを引き連れて、人々の下へと向かう。
向かっている最中、拍手が沸きあがった。

「…………?」

キャロが小首をかしげた。
何が起こっているのか、少し気になったようだ。
ユーノはそんなキャロの様子に笑顔を浮かべた。
そして二人は目的の場所にたどり着くと、ユーノは少しだけ背伸びをして、何をやってるのか見てみる。

「えっと…………ああ、パントマイムをやってるんだ」

「……ぱんとまいむ?」

キャロが不思議そうに口にした。

「パントマイムっていうのはね、実際にはない壁とかを身振り手振りで表現することだよ」

「…………?」

「って言っても分からないよね」

ユーノは苦笑すると、キャロをひょい、と持ち上げて肩車をする。

「これで見える?」

「…………はい」

キャロがこくりと頷いた。
視線はもう、パントマイムに集中していた。

「………………わぁ……」

キャロが小さな声で歓声をあげる。
ほんの数十秒で虜になったようだ。
キャロは食い入るようにパントマイムに見入る。
ユーノはそんなキャロの姿を見てよかった、と。

──連れて来てよかった。

ほんの少しでも笑みを浮かべたキャロを見ていると、本当にそう思えた。




















── 夕食時・ユーノの自宅にて ──


また、あまり表情を出さないキャロにユーノは一つの秘策を持ち出した。

「はい、どうぞ」

「……これ、なんですか?」

「オムライスっていうんだよ。僕の数少ない自信作の一つかな」

自炊を始めてからそこまで日が経っているわけではないが、ユーノは妙にオムライスを作るのがうまかった。
どうしてかは自分でも判らなかったが、こういう時に役に立ったのだから出来て損はないと思えた。

「………………」

キャロはしばしオムライスを見詰めると、おそるおそるスプーンでオムライスを口に運んだ。
何度か租借してから、飲み込む。

「…………おいしい」

キャロが感想を言った瞬間、ユーノは破顔した。
キャロはすぐにスプーンでオムライスを口に運ぶ。
どうやら、本当に気に入ったようだ。

「うん、よかった」

ユーノもキャロの反応を見てから、オムライスを口にする。
そして笑みを浮かべながら料理を食べていると、キャロの口周りが料理で汚れていることにユーノは気が付いた。

「キャロちゃん。ちょっと食べるの待って」

「──?」

疑問を浮かべるキャロに、ユーノはティッシュを使って軽く口周りを拭く。

「料理は逃げないから、ゆっくり味わって食べてね」

「はい」

キャロが素直に頷いた。
言われたとおり、ゆっくりと味わうようオムライスを口にする。

「おりこうさんだね」

ユーノは笑顔を浮かべると、

──今日、二回目かな。

思い返す。
もう何時間も一緒にいるが、歳相応の反応を見せたのは今のが二回目。
その反応も、すぐに消えてしまう。

──この子の境遇を考えれば、仕方の無いことかもしれないけどね。

でも、それでも今は歳相応にオムライスを無邪気に食べている。
だから笑みが自然に浮かんだ。






















夜中、二人で布団に並んで入る。

「明日にはフェイトが迎えに来るからね」

「……はい」

「今日は楽しかった?」

「……はい。たのしかったし、おいしかったです」

「ん、よかったよ。キャロちゃんが楽しいって言ってくれて」

少しでも良い思いが出来たなら幸いだ。

「あと、こうやって一緒に寝ることができてよかったよ」

「──?」

これはユーノ自身が。
今、切実に感じている。

「誰かが隣で寝てくれるのってさ……」

隣に人がいるというのは、

「あたたかいよね」

「…………え……?」

身体も……心も温かくて暖かい。

「僕はビックリしたよ」

「……どうして?」

キャロがユーノに問いかける。

「ずっと……一人だったからだよ」

隣で誰かが寝ることなんていつぶりだろうか。
数年ぶり、ということは確実だ。

「──なんて、僕のことはどうでもいいか。そろそろ寝ようね」

暗闇の中でユーノが苦笑する。

「おやすみ、キャロちゃん」

ユーノはキャロのほうへ身体を向けながら、目を瞑った。


















「…………あの……」

数分後、キャロがユーノに声を掛ける。
が、返事がない。
ユーノからは規則正しい息が聞こえる。

「………………ん、と……」

キャロはゆっくりゆっくりと移動していき、ユーノの側まで近づく。
そしてユーノのパジャマをほんの少しだけ握った。

「……………うん」

握れたことに満足すると、キャロはそのまま目を瞑る。

──あったかい。

今日、初めて会う自分に優しくしてくれた人。
楽しいこともおいしいものも教えてくれた人。
自分を包み込むように接してくれた人。

──ホントにあったかいな。

初めて……温かい気持ちで眠れそうだった。



















キャロから寝息が聞こえ始めると、ユーノはゆっくりと目を開けた。

「さすがに、この時間に寝るのは厳しいかな?」

まだ夜の9時にすらなっていない。
眠気はまだ訪れていなかった。

「それにしても……」

ユーノは自分のパジャマを握ってるキャロを見る。

「それじゃ、寝にくいんじゃないかな」

ユーノは起こさないようにキャロを持ち上げると、キャロの頭の下に右腕を通す。
そして自分の腕を枕代わりにして、キャロの頭を優しく降ろした。

「これでよし、っと」

少しはこの子も寝やすくなったはずだ。

「さて、キャロちゃんも寝てるんだし僕も頑張って寝てみようかな」

ユーノも目を瞑る。
このあたたかい存在があるのなら、どうしてか眠れる気がした。
















      ◇      ◇
















「…………ん……」

目が覚める。
寝ぼけ眼をゆっくりと開いて……と、そこでキャロは何か違和感に気付いた。

「……?」

寝ていたときと何かが違った。
ユーノの姿がとても近かった。
頭を撫でられている感触もした。
視線を上に向ける。

「おはよ、キャロちゃん」

満面の笑みを浮かべたユーノがいた。

「…………っ……!」

ビックリした。
眠気が無くなった。

「キャロちゃん、おはようは?」

「……おはようございます」

「うん、おはよう」

ユーノは朝のあいさつをすると、キャロを持ち上げて立たせる。

「顔を洗いに行くからおいでね」

ゆったりとしたペースで洗面所に行くユーノ。
キャロもユーノの後へ着いていった。
そして顔を洗い、歯を磨き、ユーノは朝食の準備を終わらせた。
二人してパンを口にしていると、ユーノから、

「フェイトがキャロちゃんを迎えに来るのは、お昼ごはんを食べた後ぐらいだからさ。それまでにお買い物に行こうか」

「……なにするんですか?」

「それは行ってからのお楽しみだよ」


















「……ん〜、と。なにがいいかな?」

雑貨屋のとあるコーナーにて、ユーノは悩んでいた。

「……なかなか難しい」

どれが一番プレゼントとして最適か。

「キャロちゃんは──」

何かほしいものある? と。
聞こうと思った。
が、ふとキャロと繋いでいた手に違和感があった。
様子を見てみると、キャロは何かに気を取られているようだった。
ユーノがキャロの視線を辿ってみると、そこにあったのはリボンの束。

「リボンに興味ある?」

ユーノがしゃがみこんでキャロに訊く。

「……い、いえ、だいじょうぶです」

キャロが首を振る。
が、もう遅い。
キャロの反応から、リボンセットに一番興味を持っていたのは一目瞭然だ。

「遠慮しないの」

ユーノはリボンセットを手に取ると、キャロを連れてそのままレジに向かう。
お金を払って品物を買い、店から出る。
そしてリボンセットの中からリボンの一つ──黄色いリボンを手に取る。

「はい、ちょっと後ろ向いてね」

有無を言わさずにキャロを後ろに向かせると、手馴れた様子でリボンを巻いた。

「これでいいかな?」

キャロを今度は真正面に向かせて、確認する。
おかしいところは何もなかった。

「うん。大丈夫だ」

満足げにユーノが頷く。

「え? あの、これ……」

「僕からのプレゼント。キャロちゃんと僕が会った記念にね」

ユーノはリボンセットをキャロの手に持たせる。

「もう買っちゃったからね。大事にしてくれると僕は嬉しいよ」

ユーノからそう言われて、キャロは頷かないわけにはいかなかった。

「……はい」

どうしようもないくらいに。
嬉しかった。

「だいじにします」





















── ユーノの家 ──


午後二時過ぎ、フェイトがキャロを迎えに来た。

「ごめんね。キャロを預かってもらっちゃって」

「全然問題なかったよ。キャロちゃん良い子だったし」

「そっか」

フェイトはほっ、と一安心する。

「それじゃあ、キャロ。行こ……う……?」

キャロを促そうとしたところで、フェイトがあることに気付く。

「キャロ。そのリボンどうしたの?」

「僕がプレゼントしたんだよ」

フェイトの問いにユーノが答える。

「ちょっとした記念にね」

「……ふーん」

フェイトが少しだけ冷たく返す。

「私、ユーノにリボンなんてプレゼント貰ったことないんだけどな」

なぜかはわからないが、非常に羨ましかった。

「……今度、買わせていただきます」

フェイトのじと目に耐えかねて、ユーノが申し開きするように答えた。

「まあ、それはいいとして。似合ってるよ、キャロ」

「……ありがとうございます」

「じゃあ、今度こそ行こうか」

フェイトがキャロを促す。
キャロはフェイトに連れられながら、一歩、二歩と歩き出す。
ユーノは玄関を出て、二人を見送る。



が、どうしたことだろうか。



キャロの足取りがだんだんと遅くなっていき、10歩も歩かないうちに…………止まった。

「──ん?」

ユーノが不思議に思うと同時、フェイトがキャロの顔を覗き込んだ。
瞬間、フェイトが大慌てでキャロをあやそうとしていた。

「どうしたんだ?」

ユーノが二人の下に駆け寄る。

「どうしたの?」

「ユ、ユーノ! あのっ! キャロ、キャロがっ!」

フェイトが大慌てでキャロの名前を出すので、ユーノはキャロのためにしゃがみこむ。
すると、キャロの眼から溢れているものがあった。

「…………キャロちゃん」

ユーノは名前を呼ぶと、キャロを抱っこする。

「どうして泣いてるの?」

ゆっくりとキャロの頭を撫でる。
正直、驚いていた。
泣くこともせず、笑うこともせず、少ししか感情を動かすことのなかった少女が。




涙を流していることに。




「……あの……ふぇい……と……さんと……」

キャロはユーノにしがみつく。

「…………わた……し…………」

しゃくりあげながらも、言葉を紡ぐ。

「……いっしょに……いきたい……けど…………いきたく……ないです」

キャロはさらにぎゅう、とユーノに抱きつく。

「…………はなれるの…………やです……!」

たった一日しか過ごさなかったけれど、離れたくなかった。
ユーノはそんなキャロを優しくあやす。
そしてあやしながら、フェイトに顔を向ける。

「だってさ、フェイト」

「なら、ユーノも一緒に来てくれる? 一応、明日までは休みなんだよね?」

「うん。何も問題ないから一緒に行くよ」

キャロをだっこしながら、フェイトと並んで歩く。

「まさかキャロが一日でこんなにユーノになつくとは思わなかったから、正直ビックリしてる」

「僕自身が一番驚いてるさ」

こんな、抱きつかれるほど好かれているとは思わなかった。

「でも、とってもうれしいよ」

未だにしゃくりあげるキャロの背中を優しくさする。

「私もユーノとキャロが仲良くなってくれたのはうれしい」

やっぱりユーノは優しいんだと実感できた瞬間だった。




そして、なぜだろうか。




それがフェイトには本当に嬉しかった。
















      ◇      ◇





















── 数年後 ──


「キャロ! そろそろ行くよ!」

「はい!」

ユーノとキャロは二人揃って玄関を出る。

「エリオ君とフェイトさんは?」

キャロは隣の家に視線を向ける。

「フェイトが準備に手間取ってるんだってさ」

「準備?」

「二人の入学式の録画容量がなかったみたいでね。いろいろと削除してるってエリオが言ってた」

「そうですか」

二人して笑い合う。

「おとーさんは?」

「準備ばっちり、抜かりなし」

娘の晴れ姿にエリオの晴れ姿、取り逃しはしない。
と、ここで隣の家からフェイトとエリオが出てきた。

「エリオ君が来たから、行きますね」

「うん。気をつけて」

「はい」

キャロは返事をして、エリオと合流する。
そして勢いよく振り向くと、黄色いリボンをたなびかせながら大きく手を振った。








「おとーさん、いってきます!」